犬猫の様子がいつもと違うと感じられた時は、必ず獣医師にご相談ください。
よくあることだから! 老化のせいかな? と様子を見すぎると、病気が進行し、非常に危険な場合があります。
喋れない犬猫たちは、飼い主様だけが頼りです。ご家族である犬猫の病気のサインに気付き、早期発見・早期診断につなげましょう。

犬猫の主なホルモン疾患

ー糖尿病ー
糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンが減少することによって起こります。主な臨床症状は多飲多尿、多食、体重減少です。糖尿病の治療が遅れると、非常に重篤化しやすく、命の危険性が高まります。治療は自宅でのインスリンの注射が必要となります。猫では早期の診断・治療により、インスリンの注射治療から離脱し、食事管理のみで治療が可能な場合もあります。犬猫ともに肥満は糖尿病のリスク因子です。予防も重要です。適切な体重管理を心がけましょう。

ー甲状腺機能亢進症ー
甲状腺機能亢進症は主に中〜高齢の猫に好発する病気です。甲状腺で作られるホルモンが過剰に分泌されることで起こります。甲状腺の腺腫/過形成が95%以上ですが、腺癌が5%以下で発生します。主な臨床症状【多飲多尿、多食〜食欲低下、体重減少、嘔吐、下痢、脱毛、攻撃性(性格の変化)】。身体検査で甲状腺の腫大が触知できることが多く、血液中の甲状腺ホルモン値の測定で診断可能です。治療法は内服、外科的摘出術、食事療法などがあります。

ー甲状腺機能低下症ー
甲状腺機能低下症は主に中〜高齢の犬に好発する病気です。甲状腺で作られるホルモンの分泌量が減少することで起こります。主な臨床症状は活動性の低下、食欲低下、体重増加、脱毛、脂漏症や膿皮症などの皮膚病や皮膚の色素沈着などです。血液中の下垂体と甲状腺のホルモン値を測定することで診断が可能です。甲状腺ホルモンの内服により治療します。

ー副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)ー
85%が下垂体腫瘍、15%が副腎の腫瘍が原因です。副腎で作られるホルモンが、過剰に分泌されることにより起こり、多飲多尿、多食、腹部膨満、脱毛、脱毛、皮膚の石灰化、筋虚弱が主な臨床症状です。放置すると、皮膚病の合併や、血栓症のリスクがあり、肺血栓塞栓症による呼吸困難で死亡することもあります。診断には血液検査、尿検査、画像診断、下垂体-副腎皮質軸のホルモン検査が必要です。病態に応じ、内科療法、外科療法、放射線治療などがあります

ー副腎皮質機能低下症(アジソン病)ー
詳しい原因は不明ですが、副腎で作られるホルモンの分泌が低下することが原因です。最も一般的な症状は元気消失、食欲低下、嘔吐、下痢などで、症状に波があります。血液検査で高カリウム血症、低ナトリウム血症、高尿素窒素血症などの発見で診断の助けになる事が多いですが、非定型アジソン病ではこれらの血液検査に異常が認められず、診断が難しい場合があります。画像検査とホルモン検査で診断することが可能です。

ー高血圧ー
犬猫の高血圧は特発性(本態性・一次性)よりも、心臓病、腎臓病、甲状腺機能亢進症、糖尿病、副腎皮質機能亢進症などが原因である事が多い病態です。高血圧を放置すると、突然の失明や脳神経症状を起こしたり、腎臓病や心臓病を悪化するリスク因子となります。高血圧が疑われる場合、臨床症状に注意しながら繰り返し測定を行い、血圧を評価することが重要です。降圧剤の内服で治療します。